研究課題
国際学術研究
上海及び周辺の農村地域2地点(青浦、太倉)、及び内陸部四川省の成都及び、、農村(宜賓県)という5調査地点において、計2600の無作為標本による個人とその家族の面接調査を実施し、うち100ケースには第2次的な詳細面接記録を作成した。他方、子の養育のための変則形としての祖父母と孫の世帯(隔代家族)、自営業者家族、都市戸籍を持たぬ農村からの流入者家族についても、有意サンプル各50ケースの調査を実施することによって、都市対農村、沿海部対内陸部という地域比較を基礎に、さらに統計分析と事例分析、一般例と特殊例、そして異時点間比較までを視野に入れた総合的、包括的なデータ収集を完了させたことは大きな成果であった。データ分析はなお初期的段階にとどまっているが、日本側で別添する250頁ほどの第一次報告書を刊行し、中国チームは別途『世紀之交的城郷家庭』(中国社会科学出版社)を刊行した。両国チームは現在も分析を深める共同作業を継続中である。これまでの分析結果の一端を示せば以下のとおりである。生活状態の面では、都市農村の差以上に沿海・内陸の差が顕著に捉えられた。家族形態で特に注目されたのは、沿海の太倉で婿入りをも含む直系家族が主要形態として定着しており、内陸の宜賓で大都市以上に核家族の比率が高かったことである。また家族内の女性の地位という点から見ると、都市対農村での格差が明確に存在することも確認された。生活意識についてはしかし、こうした地域区分の差が明瞭には対応していないことが認められたこと、また、いずれの地域においても生活困難時のサポート源として、家族・親族が共通して重視されている点なども、今後の分析の中心的検討課題となっていくだろう。
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