研究課題
国際学術研究
平成9年度は、2つの研究会議を開催した。ひとつは、9月に開催された東京会議で、もう一つは、3月にシンガポールで開催された。前者は、研究分担者・研究協力者相互の顔合わせ、3年間にわたる研究計画の確定、それから、それぞれの国における文化政策、特に、芸術政策の特色とその社会的・歴史的背景について議論された。アメリカは、その支援制度が巨大であり、かつ、連邦政府の役割が小さい点、イギリスは、中央政府が重要な役割を果たしているが、同時に、第3者性を重んじ、いわゆる「Arms Length Policy」を採用している。日本は、中央政府が経済的運営をしていて、ヒエラルヒ-的な関係で結びついている地方政府が実施機関として重要な機能を果たしている点が指摘された。シンガポールは、文化政策の歴史が浅いが、近年中央政府主導で実績を上げてきている。その結果、国家規模・歴史性・文化制度などの違いから、単純な比較は困難であり、慎重な比較をすべきという結論が得られた。同時に、比較をする上で、どういう理論枠組みを用いるべきであるかも議論された。この分野ではこの検討は遅れており、自分たちでこの枠組みを作る事が意見が一致した。そこで、経済的・政治的・社会的・文化的・歴史的・人類学的・法的・等の観点を勘案して作成する努力を始めた。シンガポール会議では、シンガポールの文化政策について、議論がなされた。シンガポールは、非欧米圏であり、従来の欧米よりな研究体制を是正するために、有効な視点を提出してくれた。しかし、同時に、その問題点も率直に話し合われた。同時に、アメリカ側から、「文化的植民地主義」の論点が出され、先進国側の姿勢を批判的に討議する事となった。そして、次年度のロンドン会議・11年度のニューヨーク会議と、これらのテーマをより深く、慎重に協同で分析していく事が確認された。
すべて その他
すべて 文献書誌 (5件)