研究概要 |
今年度は,リボソーム蛋白質L2を対象に,そのSe-Met置換体を作製し,PFの放射光施設を利用して回折データを収集し,構造解析を試みた.蛋白質L2は,ペプチジルトランスフェラーゼ活性センターを構成する23SrRNAのIVドメインに直接結合するRNA結合蛋白質である.50数個存在するリポソーム蛋白質の中でも,最重要蛋白質の一つとみなされている.L2を除去したリポソームは酵素活性を持たない,また変異体L2の存在下では正常な50Sサブユニットが形成されない,L2のRNA結合領域外に存在するHis残基の化学修飾により酵素活性が消失する等の実験結果から,L2は23S rRNAの持つペプチジルトランスフェラーゼ活性センターの構造形成に重要な役割を果たしているとともに,自らも酵素活性に直接に関与していることが推定されている.L2の結晶は空間群P1であり非対称単位中に2分子存在する.対称性が低いため構造解析は困難が予想されたが,PFで3波長のデータを収集し,パターソン関数を計算することで,6個のSe原子の内の4個までの位置を決めることができた.さらに,プログラムSHARP,SOLOMONを適用することで,非常にきれいな電子密度が得られ,2.3Å分解能での構造解析に成功した.この構造解析により,リポソームの中で最大のL2タンパク質がドメインより構成されていること,それぞれのドメインは70残基ほどの大きさからなること,ドメイン間にRNA結合部位が存在することを示した(EMBO.J.印刷中).この研究結果は,本年6月にデンマークで開かれるリポソーム国際会議において田中が発表予定である.情報収集のために中川がイギリスに出張し,また,ESRFから討論のために若槻が来日して北海道大学でセミナを行なった.
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