研究課題
クーロン障壁以下での^<16>Oと^<144>Smの核融合反応に対する^<144>Smの四重極および八重極振動の2フォノン励起の効果を調べた。核構造をsdf-相互作用ボゾン模型で記述し、振動運動の非調和性が核融合障壁分布に著しい影響を与えることを示した。また、その効果を通して、^<144>Smの第一励起2^+及び第一励起3^-状態がともに負の四重極能率を持つことを演繹した。これは核融合反応の実験データの解析から、丸い核の振動励起状態における四重極能率を決定した最初の例である。また、同様な解析を、^<16>Oと^<148>Smの核融合反応に対して行い、^<148>Smの第一励起2^+及び第一励起3^-状態が、それぞれ、負および正の四重極能率を持つことを推論した。2.重イオン核融合反応の解析にしばしば用いられる固有チャネル法は、厳密には、原子核の内部励起エネルギーが零の場合に適用できる。有限の励起エネルギーの効果を調べるために、我々は、固有チャネル法における重み因子にエネルギー依存性を導入し、それが極めて弱いことを示す事によって、核融合障壁分布の概念が、現実の重イオン散乱においても、有効な概念であることを示した。3.重イオン核融合反応における原子核の高次変形効果の解析を行い、また、クーロン障壁以下の重イオン核融合反応に関する最近の理論的発展について総合報告を執筆した。4.反対称化分子動力学(AMD-V)法による核破砕反応の計算機シミュレーションを行い、フラグメント生成が状態方程式を反映することを明らかにした。5.その他、ファデ-エフ理論に立脚した非断熱過程の定式化、^7Be(p,γ)^8B反応におけるチャネル結合効果の定式化、α崩壊に伴う制動輻射の理論的考察、重イオン弾性散乱における新しい現象(虹散乱の影散乱による疑似グローリ-現象)の発見、Naクラスターの電子状態に対する動的遮蔽効果の重要性の解明及びゲージ理論を用いた原子核の集団運動の定式化を行った。
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