本年度の研究活動は、(1)具体的研究計画の策定、(2)研究実施の開始、に分けられる。国際学術の共同研究では、研究場所と分担が地域的に分離されているので、注意深い研究計画を立てることが肝要であるが、相手側の研究陣(カルフォルニア工科大のグループ)の熱意とレベルの高さもあって、うまくいっていると自己評価している。 研究計画としては、時間分解光イオン化過程の全計算と実験で、具体的にターゲットとなる分子の選定を行った。実験では、時間の遅れをともなったポンプープローブの光イオン化過程で、生成物とイオン化電子の同時観測を行うべく、装置開発が進行中である。理論では、光イオン化過程の錯乱振幅と、非断熱遷移を含む分子の量子波束計算を、Franck-Condon近似をすることなく合体させる。また、これらを並列計算機上で大規模に実施する。理論も実験もかって行われたことのないレベルのもので、本質的に重要である。 現在、当研究室では、該当する量子波束計算のプログラムの作成をほぼ完了し、各種のポテンシャル面やアメリカ側から送られてくる行列要素を取り込んで、計算を始めている段階である。計算機についても、当研究室のものとカルフォルニア工科大の超並列計算機のものとで、電子回線を使って、同時にプログラム開発を行うなど、極めて良好に共同研究の実をあげてきている。数カ月後に、新しい計算データが確立され、実験結果と比較検討される予定である。
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