研究課題/領域番号 |
09044076
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
郷 信広 京都大学, 大学院・理学研究科, 教授 (50011549)
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研究分担者 |
木寺 詔紀 京都大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (00186280)
PARAK Fritz ミュンヘン工科大学, 物理学部, 教授
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キーワード | タンパク質 / 動力学 / ガラス転移 / 緩和時間 / X線結晶解析 / メスバウアースペクトロスコピー / 基準振動 / コンフォーメショナルサブステート |
研究概要 |
生体内で重要な役割を果たすタンパク質は、その生理活性機能に密接に関わる立体構造のゆらぎを示す。このゆらぎは低温では抑制され、約200K近傍でガラス転移に類似した現象を示す。そしてタンパク質をガラス転移温度以下に冷却すると活性は突然消失する。この実験事実はガラス転移点以上で獲得されるゆらぎが生理活性に必須であることを示している。このようにタンパク質のガラス転移現象の研究は生理機能の理解に直接結びつく重要な意味を持っている。タンパク貿のガラス転移は、低温X線結晶構造解析によって、原子レベルでの詳細な情報を得ることができる。 本年度は、ミュンヘンのParak教授のグループがミオグロビンの低温X線結晶回折の実験を常温から極超低温にわたる6点で行い、その結果を京都のグループが理論的解析を行った。その結果を議論するために、10月26日から11月1日まで、京都から木寺と鄭がミュンヘンに行き議論を行い、その結果に基づいて更に実験、理論解析を進めた。その結果をミュンヘンからParakとOstermannを3月16日から3月22日まで招き、議論を行いほぼ最終的な結論に達した。 実験結果の詳細な解析によると、分子内の内部運動に関わる揺らぎの大きさの温度依存性には、ガラス転移による変曲は観測されなかった。この結果は以下のように解釈される。X線結晶解析は極めて長時間にわたる測定を行いそのアンサンブル平均を測定するために、ガラス転移に伴うコンフォーメショナルサブステート間の移行運動が抑制される現象は観測することができない。この結論は、従来から議論があったX線結晶解析による揺らぎの大きさの温度依存性の変曲が実験結果の解析において内部運動を取り出して議論していないことによるものであることが分かった。
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