研究課題/領域番号 |
09044087
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
赤坂 一之 神戸大学, 大学院・自然科学研究科, 教授 (50025368)
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研究分担者 |
田村 厚夫 神戸大学, 大学院・自然科学研究科, 講師 (90273797)
山田 博昭 神戸大学, 理学部, 助教授 (90030767)
WOODWARD Cla ミネソタ大学, 生物化学科, 教授
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キーワード | 高圧 / NMR / 牛脾臓トリプシンインヒビター / 水素結合 / 揺らぎ |
研究概要 |
超高磁場下(17.6T)の高感度高分解能で、1-2000気圧の範囲で圧力を自由に制御して、二次元NMR測定を行い、蛋白質牛脾臓トリプシンインヒビター(アミノ酸58残基)の原子一つ一つからの信号の化学シフト変化を検出した。その結果、アミド水素の化学シフトは加圧によりほとんどが低磁場シフトをすることを発見した。そのシフトは圧力に対して直線的で、且つ可逆的である。この現象はアミド水素の関与する水素結合が、加圧下で短縮することにあると結論された。蛋白質内部での28個の水素結合について、シフトの大きさから2000気圧での短縮度を見積もると、短縮度は場所によってまちまちであり、二次構造内部では比較的小さく、二次構造の末端では比較的大きい傾向を示した。また、N-15標識した牛脾臓トリプシンインヒビターについて加圧下でのN-15信号のシフトを測定した。N-15信号も大きく低磁場シフトを示し、水素結合の短縮を示すとともに、主鎖のφ,Ψ角も、特にヘリックスやループ領域で変化していることが推察された。これらの水素結合の短縮度は、重水素交換速度とかなりの対応を示した。以上の結果、加圧によって、牛脾臓トリプシンインヒビターの分子全体の構造が、少しではあるが変化することが明らかになり、且つその変化の仕方が規則性をもつことも明らかになってきた。これらの構造変化は構造の揺らぎに対応するもので、超高磁場高圧二次元NMRは、蛋白質構造の揺らぎ研究の新しい方法となり得ることを示した。
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