研究課題
高エネルギー原子核衝突の多重粒子生成機構解明のため、超伝導JACEEスペクトロメータが収集した原子核乾板データから宇宙重粒子線が引き起こした原子核衝突事象を選別し解析作業を実施した。このデータは全立体角に放出された全ての荷電粒子の軌跡を1.2テスラの磁場中で非常に精度良く原子核乾板に記録するという他の実験データにはない優位点を有す。本年度は原子核乾板の自動解析システムの国内立ち上げの実施、および入射重粒子のエネルギー決定と粒子識別に必須なエネルギー損失の解析手法の確立に重点を置いた。杉立徹は5月、クラコウ原子核研究所(ポーランド)を訪問し、H.ウィルチンスキーと前年度の研究進捗状況を評価すると共に本年度の研究項目について議論し合意を得た。松本高明(広大院)は広島大学にPC制御の写真データ自動取込システムを構築し、入射粒子線のエネルギー損失の解析を行った。富永孝宏ほかは9月クラコウ原子核研究所を訪問し、その解析手法と結果につき詳細な技術的意見交換を行った。アラバマ州立大学(UAH)の自動写真データ解析装置の機能を岡山理大既設の写真解析装置に移行するため、11月に富永孝宏と伊代野淳をUAHおよび米国航空宇宙局(NASA)に派遣し、技術資料を入手すると共にT.パーネル(NASA)他と打ち合わせを行った。大気上空における1次宇宙線の散乱崩壊量を定量的に評価するために、11月、浅木森和夫をNASAに派遣し、W.フォンテイン(NASA)他とシミュレーション計算の実施とその結果の検討を行った。M.チェリーとJ.ウィルケス(ワシントン大)を招聘し、国際会議COSPARに公表する研究成果を纏める共同作業を実施した。さらに、成果公表を精力的に推進し、2編の論文を学術誌に公表した。
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