研究概要 |
1.[Ni(chxn)2]^<2+>(chxn=1,2-trans-cyclohexanediamine)を構築素子として、K_3[M(CN)_6]との反応で[Ni(chxn)_2]_3[M(CN)_6]_2・2H_2O(M=Fe(1),Co(2))を合成した。1のX線結晶構造解析の結果、結晶内にはη_2の架橋様式をとる[Fe(CN)_6]^<3->とη^4の架橋様式をとる[Fe(CN)_6]^<3->が存在して、-Fe-Ni-Fe'-Niからなる縦糸と、-Fe-Ni-Fe-からなる横糸が交叉することでFe_6Ni_6ドデカゴンを単位する2次元シートを形成していた。chxn配位子は2次元シートに上下に配向するために層間隔は12.717Aと長い。磁化率測定及び各種磁気測定(FCM,ZFCM,RM,hystersis)から、化合物1ではシート内に磁気軌道の直交性に基づく強磁性が働き、シート間にも強磁性的相互作用が働いてTc=13.1Kの強磁性体になることを確認した 2.オキサミド及びジオキシマトを分子内に有する双性架橋配位子、N,N'-ビス(2-フォルミルフェニル)オキサミド ジオキシム(H_4L)、と合成した。この単核銅(II)鎖体[Cu(HL)]^-を溶液中で生成させ、これに第二の金属イオンを作用させて三核鎖体[M{Cu(L)}_2(DMF)_2].2DMF(M=Mn(8),Co(9),Ni(10),Zn(11))を結晶として合成した。結晶構造解析の結果、ジオキシム部分が水素結合した{Cu(HL)}^-の2分子と2分子のDMFがM(II)に配位してシス擬八面体をなしている。Heisenbergモデルに基づく解析から、鎖体8と10の交換積分値はそれぞれ-11cm^<-1>,-45cm^<-1>と見積もられた。次に、8を水溶液中でKOHで処理したジオキシム水素を完全に解離させ、これに[18]-クラウン-6-エーテルの存在下でMn(ClO_4)_2・6H_2Oを作用させて、三核鎖体ユニットがジオキシマト部分でMn(II)で連結された一次元鎖状構造のMnCu(L)・4H_2O(12)と微結晶として単離した。この磁気的性質を各種磁化測定から検討して、鎖内には反強磁性的相互作用が働き、鎖間には強磁性的(又はCu(II)--Mn(II)の反強磁性的)相互作用が働き、フェリ磁性ドメイン(Tc:5.5K)をつくることを明らかにした。更に、ドメイン間には反強磁性的作用が働き、メタ磁性転移を示すことも分かった。
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