研究概要 |
CERN-WA95/CHORUS実験は、CERN SPSのワイドバンドニュートリノビームを用い、ν_μ→ν_γの出現を観測することによりニュートリノ振動を探索する実験である。このCHORUS実験の1996年と1997年のデータ収集に向けて我々は3層の大型エマルショントラッカー(ET0,ET1,ET2)をCHORUS実験装置に設置することを提案した。その目的は運動量測定の精度を向上させて測定可能な領域を10GeV/cから30GeV/cまで広げることでγ^-→h^-X崩壊の検出効率を高めることである。エマルショントラッカー(ET)の製造、設置、測量およびビーム照射中のデータ収集まで、ブラッセルグループや他の共同研究グループの協力も受けながら、成功裏に遂行することができた。原子核乾板はバックグラウンド飛跡の蓄積を避けるため、1年に2回交換した。3層のETの相対位置関係は、電磁石がオフの時に通過したミューオンを用いて較正する。全自動スキャンと測定の結果、ET0とET1の測定から外挿された予定位置に対し、ET2上での飛跡の位置は、較正の後には標準偏差約100μmのばらつきに収まることがわかった。この値は各ET平面では精度25μmの位置測定ができたことを意味するので、通常の検出器と比べ約一桁の精度向上である。ETの運動量測定精度は電磁石がオンの時に通過したミューオンを用いて評価する。ミューオンスペクトロメーターで測定された値と比較することにより、ETによる運動量測定精度は、Δp/p〜√<(0.22)^2+(0.010×p)^2> (ただし、運動量pの単位は[GeV/c])で与えられる事がわかった。提案通り運動量測定可能領域を30GeV/cまで拡張できることを明らかにした。このエマルショントラッカーは、来年度から行うニュートリノ反応の完全解析で、タウ崩壊を様々なバックグラウンドから区別するために貴重なデータを提供する。
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