研究課題
国際学術研究
昨年度に引き続きクラスターイオンビームの持つ特異な照射効果について検討を行った。クラスターイオンビーム法とは、数百から数千個の原子・分子からなるクラスターをイオン化・加速して、固体表面に照射するという手法である。この手法では表面のナノメートルオーダーの領域に超高密度の高速粒子が同時に入射するので、従来のプロセス技術では達成できない表面改質が可能となる。本研究では、京都大学のクラスターイオン照射と米国の大学が持つ高精度の結晶構造・表面界面および励起反応の評価技術を駆使して、基本的なクラスターイオンの固体への照射プロセスを明らかにして、材料プロセス技術を研究するこれらの衝突による基礎材料プロセス素過程を明らかにする。京都大学の保有している高エネルギークラスターイオン注入装置、汎用ガスクラスター照射装置を用いて作成した試料を米国側において解析評価した。今年度は特に応用面でも注目されているホウ素クラスターイオンをシリコンに注入した試料について集中して研究をおこなった。注入されたホウ素クラスターはシリコン中でアクセプタとなり、クラスターを用いることで容易に浅い注入層を形成できる。このため、クラスター注入法は、大規模集積回路の形成に適した新しい技術として注目されている。注入時に問題となるシリコン中の欠陥について透過型電子顕微鏡を中心とした評価を行った。その結果、数keVと低いエネルギーで注入したときには、注入時に形成された結晶欠陥がすべて800度という低温で回復することが明らかになった。このことはイオン散乱法からも確認されている。クラスター衝突特有の多体衝突効果や超高密度照射効果が起こる領域が完全なアモルファスとなり容易に低温アニールで回復するためと結論づけられた。また、注入時に形成される欠陥量はモノマーイオン注入に比べて格段に大きことが明らかになった。同様の結果は、昨年度まで行ってきた高エネルギーの炭素クラスター注入時にも見られ、応用上も注目すべきクラスター固有の現象である。
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