研究課題/領域番号 |
09044164
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研究種目 |
国際学術研究
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応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
工藤 章 京都大学, 原子炉実験所, 教授 (00281113)
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研究分担者 |
KOERNER Roy カナダエネルギー鉱山, 資源研究所, 部長
SANTRY Dalla カナダ国立科学研究院, 主任研究官
菅原 正孝 大阪産業大学, 工学部, 教授 (60026119)
藤川 陽子 京都大学, 原子炉実験所, 助手 (90178145)
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キーワード | アイスコア / 北極 / 火山灰 / プルトニウム / 気候変動 |
研究概要 |
本研究は、歴史的火山噴火に起因する気候急変の前兆予測を可能にするため、北極アイスコア中に保存された核実験の記録を指標として、気候変動をもたらすような火山灰(粒子状物質)の放出規模を定量的に解明することを目指している。 今回、申請者らは、北極・エルズメア島のアイスコア中に保存された長崎原爆由来の極微量のプルトニウムを分析し、その結果から、北緯80-90度圏でのプルトニウム降下量の長崎原爆のプルトニウムの全放出量に対する割合は、0.051%と算定した(ただし、長崎原爆プルトニウムの北極圏降下率0.0045Bq/m^2,global falloutに寄与した長崎原爆由来のPu量は13.8kg,Pu-239/240放射能比は0.12とした)。プルトニウムは、例えば原爆から多量に放出される核分裂生成物セシウム-137が、核分裂の初期段階において希ガス(キセノン)であるのと異なり、爆発当初から耐火性無機鉱物として放出される。従って、大気中核実験由来のプルトニウムの挙動を,大気中に吹き上がる火山灰のアナログとして用いて、例えばアイスコア中に保存された火山灰量から当初の火山の噴火規模を逆算することができると考えた。 さらに、申請者らは、貴重なアイスコアを最大限に活用する目的で、非破壊的にアイスコアの電気伝導度を測定する装置を考案し、アイスコアの電気伝導度を測定した。その結果、アイスコア中の陰イオン量と電気伝導度の間に良好な相関を見出した。歴史的大噴火時には、硫黄酸化物に代表される多量の火山性ガスが放出され、北極に到達すると考えられるため、電気伝導度測定により火山灰の得られそうな氷層の目安がつけられると考えられた。今後、アイスコアの一部を溶解して粒子状物質の元素成分を測定するとともに、日本各地の火山灰の元素組成を調査して、アイスコア中の火山灰の起源を明らかにしていく計画である。
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