研究概要 |
今年度は、北極雪氷水の分析項目の多元化のため、(1)試料の保存やコア切断等の前処理に当たって発生する試料の汚染ないしは劣化の防止、(2)各分析項目毎の、試料の消耗量を必要最小限化、に重点をおいて検討をすすめた。すなわち、直径10cmの1本のコアの約1cm厚さの各氷層から、酸素同位体比、主たる不純物成分(Na,K,Mn,Ca,Mg,Fe,Al、SO_4^<2->,NO_3^-,Cl_3^-,F^-等の陰イオン)、さらに極微量不純物成分の全ての分析データを得ることを目的とした。 具体的な検討項目とその結果は、以下の通りであった。 1. 高純度水中の不純物元素濃度とその低減対策:当実験所で得られる高純度水の主成分Na,K,Mg,Ca,Al,Feの濃度は0.04-0.3ppbであり、雪氷コアの分析前処理には、ほぼ差し支えなかった。清浄度クラス100環境下での水採取容器の酸洗浄、クラス10,000の環境では、いったん開封した水はたえず新鮮なものに交換すること、等の注意が必要であった。 2. 試料保存容器からの移染に伴う試料劣化とその防止対策:容器の酸洗浄が不十分であれば、高度の汚染が発生した。 3. 試料保存容器への分析成分吸着に伴う試料劣化とその防止対策:種々検討の結果、クラス100環境下で非沸騰蒸留した高純度硝酸で、pH2に調整するのが、適当と考えられた。 4. 雪氷コア試料の切断に伴う試料汚染とその防止対策:バンドソーで切断することにより、高度の汚染が発生し、今後検討を要する。 5. Na,K,Mg,Ca,Al,Feの分析感度・検出限界の検討と試料消費量低減化の対策:誘導結合プラズマ質量分析装置に、マイクロコンセントリックネブライザ・シールドトーチを取り付けることにより、1から7pptの検出限界値がえられ、試料消耗量も1回の分析あたり60μl程度に低減化できた。この手法により、北極雪氷水の分析を行い、表記の元素について1-10ppbの値を得た。
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