研究概要 |
11年度は、北極雪氷水の分析項目の多元化のため、(1)試料の保存やコア切断等の前処理に当たって発生する試料の汚染ないしは劣化の防止、(2)各分析項目毎の、試料の消耗量を必要最小限化、に重点をおいて検討を進めた。直径10cmの1本のコアの約1cm厚さの各氷層から、酸素同位体比、Na,K,Mn,Ca,Mg,Fe,Al、やSO_4^<2->,NO_3,Cl,F等の陰イオン、さらに極微量不純物成分の全ての分析データを得て、核爆発由来の物質と相関付けることを目的とした。 具体的な検討項目とその結果は、以下の通りであった。 1.雪氷コア試料の切断に伴う試料汚染とその防止対策: バンドソー切断時の雪氷コアの汚染を低減化する目的で、雪氷コアを保持するテフロン製の装置を開発した。 2.試料保存容器への分析成分吸着に伴う試料劣化とその防止対策:種々検討の結果、クラス100環境下で非沸騰蒸留した高純度硝酸で、pH1ないし2に調整するのが、適当と考えられた。 3.主要元素(Na,K,Mg,Ca,Al,Fe等)の検出限界の検討と試料消費量低減化の対策:誘導結合プラズマ質量分析装置に、マイクロコンセントリックネブライザ等を取り付けることにより、1から7pptの検出限界値がえられ、試料消耗量も1回の分析あたり60μ1程度に低減化できた。この手法により、北極雪氷水の分析を行い、表記の元素について数ppb程度の値を得た。 雪氷コアに含まれるプラトニウム等の人工放射性核種と過去の火山灰起源と考えられる硫酸イオンなどのデータを基に、これらの拡散現象を比較したところ、拡散の程度が驚くほど類似していることが分かった。また、この拡散の仕方は、発生元の高度(地下・海上等)や、緯度にも関わりがあることをつきとめた。
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