研究課題
マングローブ水域での生態学の研究は積極的に行われてきたが、水域における流動や物質の輸送機構に係わる物理機構の研究は少ない。現地観測と3次元の数値実験を通して生態系に関与する物理過程を解明するとともに、そのモデル化を図る。(1) 現地実測結果の検討:マレーシア理科大学(USM)では1996年11月にプジャン・エスチュアリー(全長約4km)の河口と上流端で30昼夜の流速・塩分・温度の連続観測を実施した。それらのデータ解析から、大潮・小潮の潮汐変動や降水量のマングローブ水域の物理過程に及ぼす影響を明らかにした。マングローブ水域は河川の複断面に似たクリークとスオンプスから構成されている。海水は上げ潮時にマングローブの繁茂するスオンプスへ流入し、下げ潮時には逆にスオンプスから流出する。流出入の差がトラップ現象を生じさせる。これが河口部における非対称な潮流変動をもたらし、栄養塩等のマングローブ水域からの実質的な輸送に大きく影響を与えている。また小潮時で降水量の大きな場合には、クリークに成層海面の発達が認められ、観測された塩分は表層と底層で異なる結果を得た。(2) 3次元・2次元結合数学モデルの構築と応用上述の物理現象を再現するために、クリークには密度分布を考慮した3次元数値モデル○DEMを、スオンプには進入流体の挙動を表現可能な平面二次元モデルDIVASTを適用した。両境界で水位と流量の連続性を満たす条件を与えた。ブアンジェ水域に適用した結果、河口部で観測された流速の非対称性を良好に再現していることが確認できた。スオンプでの氾濫状況等は定性的でしか分かっていないので評価できないが、USMの研究者は計算結果の再現性を高く評価している。
すべて その他
すべて 文献書誌 (3件)