研究課題
今年度は、インドネシア・スマトラ島中部にあるベングクル地域において、地球電磁気学的調査の一つであるマグネトテルリク探査および地質構造探査を行うと共に、この地域の地質構造、地震、重力に関する資料調査を実施した。スマトラ島では、その西側でほぼ北向きに動くインド洋プレートが斜めに沈み込んでいるために、海溝側の地塊がそれに引きずられ、右横ずれのスマトラ断層が活動していると考えられている。スマトラ断層はスマトラ島を縦断する延長1700kmに及ぶ大断層であり、随所に横ずれに伴うプルアパート盆地を形成し、それが火山や地熱系の形成に深く関わっている。地震は、主として断層上およびその海溝側に多く発生しており、海溝側の地塊で変形が進んでいると考えられる。ベングクル地域では、海岸から70km位内陸にスマトラ断層が走り、その断層が雁行して乗り替わっていく所にプルアパート盆地が生じており、その中にメリンタン火山が存在し周辺には温泉が分布している。このような地域の比抵抗構造を調べるためにマグネトテルリク探査を実施した。調査地域の中央に位置する火山地域では、地殻上部に低比抵抗構造が広く分布し、下部地殻から供給された熱により、広範囲に深部熱水系が発達していると推定された。プルアパート盆地の外側では比抵抗は高く堅い岩盤が分布していて、地熱系の範囲を制約しているものと考えられる。このようにプレートの斜め沈み込みに伴って形成されるプルアパート盆地の地下深部には、地熱系が形成されている可能性が大きいがその地表近くの分布は水理構造に左右されていると考えられること等を明らかにした。
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