研究概要 |
衝撃荷重を受けるコンクリート要素を含む構造物として,1995年1月17日に発生した阪神・淡路大震災において倒壊・大破した鉄筋コンクリート製橋脚や鋼製橋脚をとり上げ、動的挙動の数値シミュレーションを行った.この震災では多数の土木・建築構造物が重大な被害を被ったが、特に今回とり上げた構造物では,従来伝えられてきた地震被害例とは全く異なるパターンの破壊が報告されている.このような破壊のパターンとして注目すべきものは,直下型地震特有の地震動初期の激しい上下・水平方向の揺れの同時作用に起因した衝撃的破壊と考えられる現象である.このような直下型地震では,衝撃的破壊の可能性を考慮して構造物の損傷の原因を解明する必要がある. この解析では,三次元動的有限要素法の解析コードであるDYNA3Dを用いて、T型長柱及び鋼製門型橋脚とその地盤を一体化した三次元連続体モデルの地盤下部に,今回の直下型地震の初期の揺れ速度の波形をもとにした速度場を仮定し,地盤と構造物全体の動的挙動について調べた.この結果,T型長柱モデルについては,水平方向の揺れのみを入力した場合,長柱内の応力状態を地震動入力後の時間により,振動域とそこに至る前の過渡期の段階とに分けて考察することが重要となることが判明した.さらに,過渡期の応力値は入力波形の変化による影響,とくに入力波形の立上り時間を変化させることによる影響を敏感に受けることが分かった.一方,門型橋脚モデルについては,地震動初期の段階で柱の中間部に座屈の発生が始まる可能性があり,肉厚変化部において特に大きな応力が生じることが確認できた. このようなことから,直下型地震においては,その過渡期の段階における応力値の評価が重要であり,その評価には応力波の伝ぱの影響を無視することができないこと,また,このような動的挙動を取り扱う問題は,固体を主対象とするときの衝撃問題の一部となることが結論づけられた.
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