研究課題
トルコ共和国は、ヨーロッパプレートの縁に位置し、地震活動が極めて活発である。最大の都市イスタンブールは、人口が集中、増加しており、住宅が不足し現在も活発な建設が続いている。しかし、その構造はRCであるが、柱の形状、架構のプロポーションなどが日本とはかなり異なる。また耐震壁はまれであり、中空レンガが間仕切り・外壁に多用されプラスター仕上げが多く、また床にも中空レンガが良く用いられている。これにより建物は比較的軽量で、また外壁・間仕切壁が損傷を受けるまではかなり剛性は高い。しかし損傷を受けた後は、中空レンガは極めて脆いために剛性は極端に低下する。1991年のディナール地震、1998年のアダナ地震の被害状況を見てもこの様式の建物においては、剛性の極端な変化が起きていることを物語っている。本研究では、トルコの建物の地震時の挙動をより明確にするために、施工中各段階の建物について振動特性の変化の把握を目的に常時微動測定を行ない、また一般的な建物、被災建物の特性を知るための測定も行なった。更に水平加力により既に損傷を受けたRCフレームモデルと実物建物の強制振動実験をあわせて行なった。また国内で使用されている耐震診断法により耐力などの確認も行なった。その結果、(1)国内の建物に比較して、軽量であること、(2)建物の周期は、フレームのみの場合と中空レンガ+モルタル仕上げによる常時微動測定から推定した建物の剛性の変化は非常に大きく、(3)破壊状況によるが、被災後は固有周期が非常に長くなること、などがわかった。建物の剛性の低下が、非耐力壁の破壊により突然おき、これが不均一に起きるために、危険なモードを誘発する恐れがある。また、柱材が方向性を持ち靭性がないく、また耐力壁などによる鉛直力に対する冗長度が皆無に等しいために地震時にはかなりの被害が予測され、早急な対応が必要と考える。
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