研究概要 |
新千年紀を期して,20世紀を代表する生物試料を、できる限り生きたまま,地球環境試料ととともに長期間にわたって自然界保存し,10年〜50年単位の遺伝子レベルでの地球環境影響評価の研究に役立てるとともに,千年先の遠い未来の人類に対する貴重な科学的遺産として残す。この計画を「生物・環境タイムカプセル2001計画」と呼び,1994年以来,文部省科学研究費の助成を頂いて基礎研究を継続している。 平成9年11月には海外の研究分担者を日本に招き,千里ライフサイエンスセンター,生命誌研究館,環境庁国立環境研究所において,これまでの研究成果のとりまとめと,今後の具体的な研究計画について討議した。また関係する国内の生物・環境試料保存機関(農水省生物資源研等)を視察し,担当者と意見交換を行った。 生物・環境試料の保存は基本的に非常に低い低温条件が必要とされることが,通常の博物館や美術館試料の長期保存と全く異なる点である。この場合,一旦保存が中止されると,それまで営々として続けてきた保存努力が水泡に帰す。100年単位の保存を考えた場合,そのリスクの主因は機械・電気的な故障ではなく,国の経済・政治的な変動に伴う,予算の打ち切りや組織変更である。100年後には国家そのものでさえ現在の状態で存続している可能性は高くない(日本は例外的である)。この問題に対処する方法は2つある。(1)試資料の国際的な分散共有(ネットワーキング)(2)南極や月の極等,自然界の低温域での保存。 本年度の成果は以下のとおりである。(1)上記の国際的コンセンサスが得られた。(2)2001年〜2010年の基本計画案ができた。(3)生物試料の保存に必要な条件と,極地の条件・現在の保存技術の対応が検討され,今後さらに開発が必要な技術的課題が明らかになった。(4)これらのいくつかに対する基礎実験結果が示された。
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