研究概要 |
新千年紀を期して,世界中の生物の,種子,胞子,精子,卵子,始源生殖細胞のような生殖細胞類を地球環境試料とともに南極の高地ドームFおよび月の極のクレータ底に埋め,20年50年単位の遺伝子レベルでの地球環境評価の研究に役立てるとともに,1,000年先の未来の人類に届ける計画である。これを「生物・環境タイムカプセル2001計画」と呼ぶ。これを実現するための国際共同研究および調査を行っている。 【実験】 南極ドームF(標高3,810m)の水面下20mは地球上で超長期保存に最適な地点であるが,温度がやや高い(-58℃)。ただし温度変化皆無で無震動である。このような環境下では,-100℃以下から非常にゆっくり昇温して,-58℃で一定温度に保てば,冷却の場合の過冷却に対応する過昇温状態となることが期待され,氷晶変化が起こらず,これまで知られているよりも多くの生物種の生殖細胞が超長期保存できる可能性がある。江藤は無震動で温度を上下する実験手法を開発した。細井はこれを用いて生物細胞に対して過昇温状態が成立するかどうか実験している。岡田は既に提案した超長期温度記録装置に使う金属のクリープ特性について高精度の実験を継続している。柴田は環境ホルモン物質の長期保存性について実験している。渡辺・中村は,ミズホ基地で採取された氷柱試料を用いて,南極氷床コア中の微粒生物試料のDNA解析の可能性を実験的に検討した。 【調査】 大西・江藤はアメリカの種子保存状況の調査と,環境試料および種子保存技術に関する技術情報の交換を行った。細井は米国の動物生殖細胞保存について,柴田・江藤はドイツの環境試料バンクで,環境ホルモン物質の保存と分析について共同研究を行った。 【研究報告】 環境技術特集号として,生物・環境タイムカプセル計画を組んで頂き,これまでの研究成果をとりまとめて報告した。 (以上800字)
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