研究概要 |
本年度は,昨年度開発した大電流密度のヘリウムビーム源の諸元を調べた.引き出し電極径6mmのバケット型イオン源から引き出されるビーム電流は,イオン源の放電電力増強と平行して引き出し電圧を増加させることによりほぼChild-Langmuireの原則に従い増加していく.しかし,イオン源内部のプラズマパラメータを測定すると,放電電力増強とともに電子温度が増加し,結果として得られるビームのエミッタンスも増加する.次に静電6段4重極レンズ(ESQ)をテストスタンドに設置し,上記のヘリウムビームにより,ビーム収束効果,エミッタンスの変化,空間電荷効果等を調べる実験を行った.その結果規格化パービアンスが0.003以下である場合には,50cm下流で初期のビーム径と同程度にビームを収束させ,ほぼ100%の効率でビームが輸送できることがわかった.又,この時エミッタンスの増加はほとんどみられず,空間電荷効果とビーム収束のための静電場の重畳効果は非線形の領域に入っていないことがわかった.静電6段4重極レンズの印可電圧設定値にはかなりひろい許容範囲があることが検証され,今後広い応用が期待できる. さらにパービアンスが大きい領域,あるいは6段4重極レンズの許容範囲の限界領域で,詳細なエミッタンスダイアグラムの測定を行った.このダイアグラムは非線形の特徴を有しており,今後非線形ビーム物理の研究に発展すると思われる.
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