研究分担者 |
三浦 一芸 農水省, 中国農業試験場, 主任研究官
野田 博明 農水省, 蚕糸昆虫農業技術研究所, 室長
星崎 杉彦 東京大学, 大学院農学生命科学研究科, 助手 (10270894)
森岡 瑞枝 東京大学, 理学系研究科, 助手 (20272461)
佐々木 哲彦 東京大学, 大学院・理学系研究科, 助手 (60235257)
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研究概要 |
1.Wolbachiaはリケッチア様の細胞内共生微生物で,主として昆虫を中心とした節足動物に感染が知られていたが,本研究班メンバーによって初めて線虫類(イヌ・フィラリア)にも分布していることが明らかにされた. 2.Wolbachia感染がもっとも広範みもたらす現象として知られる細胞質不和合に分子機構について検討した結果,主として2つの事実が明らかになった.a)ショウジョウバエの細胞内におけるWolbachiaの遺伝子発現を調べたところ,28kDaの外膜タンパク質の特異的合成のあることがわかり,これをWOSPと名づけた.b)Wolbachiaに感染したタイワンエンマコオロギの精子では,45kDaの塩基性タンパク質の等電点が著しく変化することがわかり,現在その原因がリン酸化にあるか否かを検討中である. 3.Wolbachiaの系統は大きくA,Bに分かれるが、同定されているタンパク質遺伝子がftsZだけであったため,とくにA系統の詳細な分子系統解析が困難であった.本実験では新たにWolbachiaのgroEオペロンを同定したので,その塩基配列によって,これまでよりも詳細な系統解析が可能となった. 各種メイガ間でWolbachiaを移植することにほぼ成功したので,これを利用して,異なる生物現象をひき起こすWolbachiaの宿主を人為的に交換し,細胞質不和合だけでなく,産雌性単為生殖,雌化などの分子機構を明らかにする途が拓かれた. 5.ウンカ類に対する感染実験から,Wolbachiaに対する受容性が種によって大きく異なることが示唆され,この細菌の今後の動物界への広がりを予測する上で1つの手がかりが得られた.
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