研究分担者 |
RICHNER Walt スイス連邦工科大学, 植物科学研究所, 研究官
STAMPS Peter スイス連邦工科大学, 植物科学研究所, 教授
中元 朋美 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助教授 (50180419)
山路 栄司 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助教授 (10143405)
小柳津 広志 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 教授 (70177301)
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研究概要 |
近年の農業活動は,効率化重視の生産体制のなかで,必ずしも環境保全的あるいは持続的とは言えなくなってきている.時速性の高い農業システムを再構築するための基礎的な条件の解明をすすめた. 1.農業の環境インパクトの中から水質を取り上げ,関連文献を読み論点を整理した.不耕起栽培は投入エネルギーを低下させるものの、用水量を増大させ環境負荷を高めるおそれがあると判断され,今後の更なる検討の必要が生じた.(山路) 2.不耕起栽培について,ヨーロッパの小麦栽培との対比の上で,我が国の水田作の特徴,とくに栽培方法の変化に伴う水稲の生育パターンの変化について文献を収集し整理した.畑作に比べると水田作は持続性の高い生産体系であり,現時点でここに不耕起栽培を導入することによる生育面からの利点は多くないことを指摘した.しかしながら,不耕起栽培にともなう生物多様性の増加は病虫害の軽減につながる可能性がある.(秋田) 3.畑作の不耕起栽培圃場(スイス,Rutti-Zollikofen)においては,慣行のブラウ耕に替わる不耕起栽培あるいはチゼル耕によって,土壌中の生物孔隙の量が増加することが分かった.これは,土壌動物の活動がこれらの保全耕うんによって活発になったためと推察された.生物孔隙の量は,栽培管理法に伴って生物多様性の指標となりうると考えられる.(中元) 4.物質循環の面からは,都市ゴミや下水汚泥を農耕地に投入することが課題となる.この場合に問題となる農耕地に混入した重金属の毒性を,土壌微生物への影響に基づいて評価した.連続抽出法によって混入した重金属を画分化して評価したところ,水溶性および交換性の画分が微生物の生育と多様性に影響を与えることが分かった.今回行った微生物に対する毒性評価は.従来植物を栽培し長時間を要した方法に替わる迅速な評価法となることが期待される.(小柳津)
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