研究課題/領域番号 |
09044207
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
永田 俊 東京大学, 海洋研究所, 助教授 (40183892)
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研究分担者 |
BENNER R. テキサス大学, 海洋科学部, 準教授
KIRCHMAN D.L デラウェア大学, 海洋学部, 教授
小川 浩史 東京大学, 海洋研究所, 助手 (50260518)
木暮 一啓 東京大学, 海洋研究所, 助教授 (10161895)
小池 勲夫 東京大学, 海洋研究所, 教授 (30107453)
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キーワード | 溶存有機物 / 海洋微生物 / 溶存タンパク質 / 細胞外加水分解酵素 / バクテリア / 膜タンパク質 / 有機物分解 / 炭素循環 |
研究概要 |
溶存有機物は、地球上の3大有機炭素プールのひとつとして、大気中の一酸化炭素濃度の変動に大きな影響を及ぼす。本研究は、海洋の溶存有機物とそれを分解する微生物群集の相互作用を明らかにすることにより、海洋における有機物の分解速度定数の規定要因を明らかにすることを目的とする。来年度は、海水中に存在する複雑な高分子有機複合体の分解過程に焦点を合わせ、新たな実験的解析手法の開発を試みた。主な成果は以下の通りである。 1。放射性同位元素(14Cおよび3H)により標識した海洋細菌由来の有機物(タンパク質)をモデル化合物とし、海洋細菌群集による複雑な有機物複合体の無機化速度を、高感度に検出する新たな実験系の構築に成功した。 2。構築した実験系を用い、天然海水中の微生物群集による溶存タンパク質の分解速度が、化合物の存在状態(遊離型、膜成分との結合型)により大きく異なるという仮説を検証した。その結果、膜結合型タンパク質は、遊離型に比べその分解速度定数が著しく低いことが明らかにされた。以上の結果から、溶存タンパク質が、他の高分子成分(特に膜成分)と複合体を形成することにより、迅速な微生物分解を免れ、海水中に蓄積するという考えが、初めて実験的に証明された。 3.海水中の高分子分解活性の指標である、バクテリアの細胞外加水分解酵素活性の測定方法の検討を行った。とくに、従来知見が殆どない、生物量の低い外洋域深層での活性測定方法の改良をおこなった。また、改良法を用いて、現場海域での有機物分解活性の分布の観測を行い、海域により活性の鉛直分布パターンが著しくことなるという新しくかつ重要な知見を得た。現在、このパターンが発現する機構に関して解析を行っている。
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