骨格筋特異的カルパイン及びコネクチンの関与する筋ジストロフィー症の分子機構の解析

1997 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 09044208
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 鈴木 紘一 東京大学, 分子細胞生物学研究所, 教授 (80011948)
• 研究分担者: BECKMANN Jac Genethon研究所, 部長 ; 木村 澄子 千葉大学, 理学部, 助教授 (50093232) ; 反町 洋之 千葉大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助教授 (10211327) ; 石浦 章一 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 教授 (10158743)
• キーワード: カルパイン / コネクチン / 筋ジストロフィー / タイチン

研究概要

カルシウム依存性プロテアーゼ、カルパインの一分子種であるp94の構造と機能相関を明らかにしつつ、p94が原因遺伝子であるとして同定された肢帯型筋ジストロフィー症の病因を分子レベルで明らかにすること目的として研究を行った。
p94は自己消火速度が速く、生化学的な研究には向かないので、活性中心のシステインをセリンに変えた変異体を使って性質を検討した。その結果、p94ホモダイマーとして存在すること、この変異種は全く活性がなく、カルシウム依存下でも安定に存在するので、構造と機能相関を解析する材料として適することが明らかになった。
p94の変異種等をX線結晶解析によって構造を明らかにすべく、バキュロウィルス系でカルパインを大量に発現させる系を開発し、精製した。精製したカルパインを種々の条件で結晶化させ、X線結晶解析に適する結晶を得、構造解析を進めている。
筋ジストロフィー症患者で見出されるp94の点変異をCOS細胞で発現させて単離し、種々のp94変異体を調製した。これらの変異体につき、p94に特有の性質、コネクチン結合活性、基質分解活性、カルシウム結合活性その他を調べた。その結果、すべての変異体に共通して見られる変異は基質の一つとして用いたフォドリンの分解活性の消失であった。従って、筋ジストロフィー症はp94の変異に伴う細胞内の基質タンパク質が分解されないことが直接の原因と考えられた。
今後はp94の基質タンパク質を同定することによって筋ジストロフィー症の病因解明を進める予定である。また、p94とコネクチンの結合が筋収縮や筋疾患とどう関係するか引続き解析するための共同研究を続ける。

研究成果

• [文献書誌] H. Sorimachi, S. Ishiura & K. Suzuki: "Structure and physiological function of calpains" Biochem. J.328. 721-732 (1997)
• [文献書誌] K. Kinbara, H. Sorimachi S. Ishiura & K. Suzuki: "Muscle-specific calpain, p94 interacts with the extreme C-terminal region of connectin, a unique region flanked by two immunoglobulin C2 Motifs." Archives of Biocehmistry and Biophysics. 342. 99-107 (1997)
• [文献書誌] Y. Ono, H. Sorimchi & K. Suzuki: "Structure and physiology of calpain, an enigmatic protease" Biochem. Biophys. Res. Commun.in press (1998)
• [文献書誌] H. Sorimachi, A. Freiburg, B. Kolmere, K. Suzuki, et al.: "Tissue-specific expressionand -binding progerties of the Z-disc titin : Implications ofr the nature of vertebrate Z-discs." J. Mol. Bio.270. 688-695 (1997)
• [文献書誌] K. Kinbara, H. Sorimachi, S. Ishiura & K. Suzuki: "Skeletal muscle-specificcalpain, p94 ; Strictire and physiological function" Biochem. Pharmacol.in press (1998)
• [文献書誌] H-J. Lee, H. Sorimachi, S. Y. Jeong, et al.: "Molecular cloning and characterization of a novel tissue-specific calpain predomirantly expressed in the digestive tract." Biol. Chem.379. 175-183 (1998)