1999年度は、細胞内での複合体形成に重要な役割を果たすと考えられる分子シャペロン、GroEL/ES系の機能の精査の研究を行った。一般にラン色細菌の光合成装置を複合体として大腸菌で生産させる試みは上手く行かない。そこで、GeoEL/ES系との共発現系が、これらの機能発現を補助できるか否かを検討した。 また、ATP合成酵素を光合成装置複合体のモデルとして、チラコイド膜上での再構成実験を行い、この酵素が膜状にアセンブリするのに必要なサブユニットの同定、機能の維持に重要なサブユニット間相互作用を調べた。 まず、研究代表者の久堀は、10月17日から11月22日までドイツを訪問し、ハインリヒ・ハイネ大学Strotmann研究室においてStrotmann教授、Kroth博士と共に、チラコイド膜からのATP合成酵素の除去とリコンビナント蛋白質を用いた再構成実験を行い、膜酵素のアセンブリに必要なサブユニット群の考察を行った。また、1998年度に作成したラン色細菌のGroEL/ES発現系を用いて、ルール大学Kruip博士らが調整した光合成装置のアセンブリに重要ないくつかの膜タンパク質因子の発現系との共発現を行い、ラン色細菌のGroEL/ESシステムの補助能力を調べた。この研究には、東京工業大学資源化学研究所生物資源部門所属・日本学術振興会奨励研究員 山田康之君を同行した。さらに、11月22日から26日までスイス連邦・チューリヒ大学のPluecksum教授を訪問し、蛋白質フォールディングに関して最新の情報を収集した。 2000年1月17日から2月7日までルール大学のJochen Kruip博士が来日し、上記のGeoEL/ESとの共発言実験を継続して行った。なお、本実験に必要な消耗品の購入に、補助金の一部を充当した。
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