受精における特異性は主に精子と卵外被との相互認識、相互作用の特異性に寄っている。本研究では受精の第一段階である先体反応誘起に着目し、共同研究を行った。 ヒトデの先体反応は卵ゼリー中の巨大糖タンパク質ARISが主要な役割を担っている。今までに我々はこの活性はARISの糖鎖部分に由来し、最小活性単位は5糖の繰り返し構造10回Fr.1 であることを明らかにし、さらにその5糖の構造も決定した。昨年度はARISの活性糖鎖が卵ゼリー中でどのように存在し活性を持つかを解明するために既にわかっている5糖の構造のコンピューターモデリングとARISのX線解析実験から3次元構造を推測したところ、2重ラセン構造を持つ糖鎖がテトラマーを形成していると考えられたが、本年度はさらにサンプルの調整を行い、より精度の高いX線解析像を得た。ARIS受容体の同定はBIAC0REXなどを用いた精子膜画分を用いたFr.1 との結合実験を行っているが、ウ二で先体反応にかかわると言われているREJグループについてヒトデ精巣cDNAライブラリーをスクリー二ングしている。現在進行中である。ARISの活性誘起を補助的に助ける因子のひとつであるAsterosapにより精子内のcGMP濃度一時的な急激な上昇が起こることが示された。これは昨年度に得られたAsterosap受容体がグアニレートシクラーゼであるという結果と併せると、卵ゼリー中Asterosapが精子膜上のグアニレートシクラーゼを活性化し細胞内cGMPを上昇させ、精子を活性化すると考えられる。
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