研究課題/領域番号 |
09044220
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
片岡 幹雄 奈良先端科学技術大学院大学, 物質創成科学研究科, 教授 (30150254)
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研究分担者 |
徳永 史生 大阪大学, 大学院・理学研究科, 教授 (80025452)
上久保 裕生 高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 助手 (20311128)
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キーワード | 蛋白質動力学 / 蛋白質のガラス転移 / 中性子非弾性散乱 / Staphylococcal nuclease / 中間子準弾性散乱 |
研究概要 |
昨年度の研究により、低温下で低エネルギーの動力学には、折畳み濃霧に関わらず、大きな差がないが、ガラス転移の様相は、折畳みの有無によって異なることが明らかになっていたので、室温下での低エネルギー動力学を主として中性子準弾性散乱スペクトルを測定することによって調べた。その結果、非干渉性弾性構造因子(EISF)がStaphylococcal nuclease野生型(折畳まれている)、そのフラグメント(コンパクトな変性状態にある)及びミオグロビン(構造が異なる)について求められた。得られたEISFには、明らかな肩が検出された。これまで報告されているEISFは精度が悪く、この肩の存在が見落とされていたが、全てについて見ることができる。このEISFは、限定された球内の拡散的運動と2箇所以上のジャンプ運動を組み合わせることによって合理的に説明できることがわかった。つまり、室温の水和した蛋白質は二つ以上の異なるコンフォーメーションを取ることができ、さらに各原子は、各コンフォーメーションのポテンシャルの中で振動運動していると解釈できる。ジャンプ距離と球の半径などを求めるためには、より精度の高い測定が必要である。 弾性散乱強度のQ依存性を調べると、蛋白質動力学の不均一性を評価できると考え、詳細な測定を試みた。これまで2部位間のジャンプで説明されていた不均一性であるが、平均自乗変位に分布があると考えることでより合理的に説明できることがわかった。不均一性の温度依存性を見たところ、低温化では不均一性が顕著であるが、ガラス転移点以上の温度では、不均一性(分布関数の広がり)はほぼ一定であることがわかった。この方法は蛋白質動力学の研究に新たな視点を加えると考えられる。
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