βラクトグロブリンの立体構造形成反応の分子機構

1997 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 09044221
• 研究機関: 大阪大学
• 研究代表者: 後藤 祐児 大阪大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (40153770)
• 研究分担者: 桑田 一夫 岐阜大学, 医学部, 助教授 (00170142) ; 片岡 幹雄 大阪大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (30150254) ; BATT Carl A. コーネル大学, 食品学部, 助教授
• キーワード: 蛋白質 / 変性 / フォールディング反応 / メタノール資化酵母 / βラクトグロブリン / 核磁気共鳴 / α→β転移 / 安定同位体標識蛋白質

研究概要

蛋白質の立体構造形成(フォールディング)機構を理解することは、生命科学の基礎となる重要な問題である。ウシ乳中に多く存在するβラクトグロブリンは、主にβシート構造からなる蛋白質であるが、近接したアミノ酸残基間の相互作用はαヘリックスを形成する傾向を強く示す。また、同蛋白質のフォールディング反応の途中に、ネイティブ構造(βシート)とは異なる二次構造(αヘリックス)の形成されることが示されている。本研究では、βラクトグロブリンのフォールディング機構を解明することを目標として研究を行なった。
1.βラクトグロブリンの大量発現系の確立:メタノール資化酵母を用いてβラクトグロブリンの大量発現系を確立した。
2.安定同位体標識βラクトグロブリンの作製:メタノール資化酵母を用いることにより、15N、13C安定同位体で標識したβラクトグロブリンを作製した。
3.標識βラクトグロブリンのNMR解析:安定同位体標識βラクトグロブリンを材料として、異種核多次元NMRを測定した。水溶液中での天然構造と、アルコールによって誘導されるαヘリックスに富む状態について、主鎖原子の同定を完了した。これにより、天然状態とαヘリックス状態の二次構造を、アミノ酸残基レベルで明らかにした。
4.α→β転移の分子機構:天然構造からαヘリックス構造への転移領域でのNMRスペクトルを解析することにより、α→β転移の中間状態の存在することを明らかにした。これをもとに、α→β転移の分子機構の解析をはじめた。
以上の成果を発表し、関連分野の研究者と交流するため、後藤と桑田がスイスを訪問し、有益な成果を得た。また、桑田はNMR解析を促進するため、米国を訪問した。

研究成果

• [文献書誌] Kataoka, M.: "Structural characterization of the molten globule of α-lactalbumin by solution X-ray scattering." Protein Sci.6(2). 422-430 (1997)
• [文献書誌] Hamada, D.: "The equilibrium intermediate of β-lactoglobulin with non-native α-helical structure." J.Mol.Biol.269(4). 479-487 (1997)
• [文献書誌] Hoshino, M.: "Design and characterization of the anion-sensitive coiled-coil peptide." Protein Sci.6(7). 1396-1404 (1997)
• [文献書誌] Hoshino, M.: "Trifluoroethanol-induced conformational transition of hen egg-white lysozyme studied by small-angle X-ray scattering." FEBS Letters. 416(1). 72-76 (1997)
• [文献書誌] Hirota, N.: "Group additive contributions to the alcohol-induced α-helix formation of melittin." J.Mol.Biol.275(2). 365-378 (1998)
• [文献書誌] Kim, T.-R.: "High level expression of bovine β-lactoglobulin in Pichia pastoris and characterization of its physical properties" Prot.Eng.10(11). 1339-1345 (1998)
• [文献書誌] Fink, A.L.: "Molecular chaperones in the life cycle of proteins:Structure,function,and mode of action." Marcel Dekker, 626 (1997)