研究分担者 |
COX Raymond オーデンセ大学, 助教授
MILLER Melle オーデンセ大学, 助教授
三室 守 山口大学, 理学部, 教授 (40142004)
永島 賢治 東京都立大学, 理学研究科, 助手 (80264589)
嶋田 敬三 東京都立大学, 理学研究科, 助教授 (80112473)
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研究概要 |
光合成は嫌気的な環境で生まれ,その後酸化的な環境に適応する必要が生じた.本研究は,絶対嫌気性細菌のクロロビウムおよび通性嫌気性細菌のクロロフレクサスと紅色細菌を用いて,酸素分子による光合成色素間のエネルギー移動と電子伝達の調節機構を明らかにすることを目的とした.2年間にわたる日本,デンマーク,フランス,イタリアの研究者による国際共同研究により,以下の成果を得た. (1) 緑色イオウ光合成細菌の光捕集器官であるクロロソームでは,環境中の酸素の有無により蛍光強度が10倍以上変化する現象が知られていた.この蛍光変化が電子移動反応の調節を通して酸素のある環境への適応機構となっていることを確かめるため,酸化還元条件を変化させたときの電子伝達反応を起こすための光強度を測定した.その結果,確かに適応機構であることが明らかとなった.(2)緑色糸状細菌では,酸素の有無により蛍光強度は基本的に変化しない.我々は,緑色イオウ細菌の蛍光強度変化の原因物質はある種のキノンであるという説を持ち,人工的なキノンと緑色糸状細菌を使ってそのことを確かめた.(3)蛍光強度変化の原因物質であると考えられるクロロビウムキノンとバクテリオクロロフィルcが直接相互作用することを強く示唆する実験結果を得た.(4)紅色光合成細菌の酸化還元環境への適応と光合成反応中心結合型チトクロムとの関係を明らかにするために,そのチトクロムの多様性を検索し,これまで知られていた4つのヘムではなく,3つのヘムを持つ種を発見した.この種は,酸素のある環境にも適応した種であり,それほど還元的でない環境が,チトクロムの変異をもたらした可能性が考えられた.
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