研究概要 |
酵母Yarrowia lipolyticaの染色体DNAから、自律複製配列をセルフクローニングしたところ、動原体と密接に連鎖した3つの複製起点が得られた。これらはY.lipolyticaの6本の染色体の動原体のうち、CEN1,CEN3,CEN5とその近傍の複製起点を含むことが以下の実験で示された。1)パルスフィールドゲル電気泳動により6つの染色体の異なるバンドにハイブリダイズする。2)CENを含むDNA断片を他の染色体部位に挿入すると、二動原体染色体特有の染色体切断が起こる。3)CENのみを含むプラスミドを用いて、高頻度形質転換を指標として、染色体DNAより多くの複製起点が得られる。また、2次元ゲル電気泳動により複製起点の証拠であるフォークのパターンが確認される。 以上の事実より、Y.lipolyticaではプラスミドの安定維持には複製起点と動原体が両方必要であることが分かった。動原体は核内プラスミドの分配、または複製された娘プラスミドの解離に関与すると考えられた。しかし、核マトリックスへの単純な結合ではCENの機能は説明できないことが示された。 CEN1の動原体領域を限定したところ、約130bpの大きさであった。そこで、複製起点のみをもつプラスミドベクターを用いて、高頻度形質転換できる染色体断片を新たに選択したところ、新しい3種類のクローンが得られ、それらの中の2つはCEN2とCEN4であった。もう一つ別に得られたクローンはCEN1の近傍の配列であったが、最小のCENIとは重なっていなかった。この事実はY.lipolyticaの動原体が領域的なものであり、Schizosaccharomyces pombeや高等真核生物に似ていることを示唆する。動原体領域に保存されている配列を部位特異的変異し、CEN保存配列の機能を解析中である。
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