研究課題/領域番号 |
09044238
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研究機関 | 国立遺伝学研究所 |
研究代表者 |
嶋本 伸雄 国立遺伝学研究所, 構造遺伝学研究センター, 教授 (20127658)
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研究分担者 |
十川 久美子 国立遺伝学研究所, 構造遺伝学研究センター, 助手 (20291073)
永井 宏樹 国立遺伝学研究所, 構造遺伝学研究センター, 助手 (80222173)
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キーワード | RNA polymerase / major sigma factor / protein footprinting / omega subunit / Esherichia coli / Bacillus subtilis / transcription initiation |
研究概要 |
本年度の最大の発見は、バクテリアにおいて初めてプリオン様調節機構の発見である。転写の大部分に関与する主要転写開始因子の動態は、病原菌を含むバクテリアを制御するために重要である。大腸菌の主要転写開始因子σ^<70>因子の細胞内の動態を観察するために、大腸菌のクロモゾーム上のσ^<70>の遺伝子(rpoD)を破壊した菌株を昨年度作製した。この株を利用して、プラスミド上の遺伝子の発現を制御することによって、野生型変異型のσ^<70>の細胞内量を調節した。この結果、σ^<70>は、高い増殖温度や増殖後期に、σヘリックスからβ構造の転移を伴うアミロイド繊維を形成して、転写の活性を低下させ、マイナーσによる転写パターンに切り替えることが明らかになった。アミロイド繊維を形成しやすい変異株、しにくい変異株に置き換えると増殖温度が変化したので、σ^<70>が大腸菌の分子温度計となっている傍証を得た。また、σ^<70>の細胞内濃度を変化させながら観察すると、熱ショック遺伝子の定常的発現量と誘導的発現量はともにσ^<70>の存在量に反比例したので、熱ショックσとのスイッチングアミロイド生成との関係を証明した。 また、20年来謎であった、RNAポリメラーゼのωサブユニットの機能を明らかにした。Ω欠損株は、野生株と同じ表現型を示すが、コア酵素には、シャペロニンGroELが結合していた。GroELを除いたコア酵素はσ^<70>を結合することができず、活性が無かった。つまり、ωサブユニットはコア酵素の成熟因子であり、これを欠く細胞においてはGroELがその役割を代行することが明らかになった。 σ^<70>のアミロイド繊維を含む封入体を可溶化する必要から、高濃度のグリセロールを用いた可溶化法を開発した。この手法を、各種生物の蛋白質を大腸菌で量産したときにできる封入体に応用し、8-200倍の改善を観察し、その一般性を証明した。
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