研究概要 |
光合成の反応機構を精査するために、従来とは異なる視点、「系統性」を取り入れて解析することを始めた。今年度は初年度なので、以前から共同研究を行なっていた研究者間での研究を特に進めた。アラスカ大学のPlumley博士と東大の池内博士との共同研究結果を主に記す。 [目的]Grossmanらによって報告されたhliA遺伝子群は真核生物に広く分布するアンテナクロロフィル結合タンパク質と相同性があり、原核生物における祖先型の遺伝子といわれている。一方、紅藻ではLHCとhliをともにもっており、両者は異なる生理的役割をもっていることが推測される。本研究では、シアノバクテリアにおけるhliの生理的生化学的性質を分子生物学的アプローチで明らかにすることを目指し、進化の過程で光合成の進化とどのように関わってきたかという問題の手がかりを得る事を目指した。 [結果]Synechocystis sp.PCC6803のhli遺伝子群について、(1)遺伝子破壊および大量発現による変異株を作製し、生理的解析を行う研究、(2)大腸菌で大量発現させ、hliタンパク質のクロロフィル結合能をin vitro再構成によって解析する研究を開始した。(1)については、hliの一つ(ss12542)の遺伝子破壊株、ss12542,ss11633,ssr2595の本来のプロモータを強力なpsbA2プロモータに交換した大量発現株を作製した。現在、これらの変異株の単離を進めている。(2)については、4種のhli遺伝子をpETベクターに組み込み、誘導条件下で大腸菌で発現させた。しかし、hliが膜タンパク質のためか、大腸菌は死滅しタンパク質を得ることはできなかった。そこで、より温和な融合タンパク質の発現を現在進めている。また、(1)で作製したpsbA2プロモータをつないだhli遺伝子の大量発現株のチラコイド膜からhliタンパク質を単離生成することを検討している。
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