研究概要 |
光合成の反応機構の研究は,進化という新しい軸を設定することで,より本質的な理解に達する.酸素発生型光合成反応系の出現には大きな不連続性(例えば,酸素発生型光合成生物の出現水の酸化反応機構の起源,2次共生によるChl a/c植物の出,)が多く残されている.これらの重要課題を明らかにするためには,酸素発生型光合成生物の幾つかの群についてそれぞれ性質を調べて互いに比較することは意義のあることである. (1)藍色細菌や紅藻では酸素発生に必須の成分であるシトクロムc550の局在性や反応中心あたりの量を解析した.紅藻Porphyridium cruentumでは量があまりにも少なくその局在性は明らかに出来なかった.一方,藍色細菌Synechocystis sp PCC6803では複数の遺伝子が存在することが明らかになった. (3)班員全員が一堂に会して今までの研究を総括し、次のステップへの足掛かりを求める作業を行った。光合成色素系、反応中心、色素合成系について、光合成細菌から高等植物に至る「系統性」を基礎に、それぞれの系がどのように変遷してきたかを、確実なデータに基づいて議論した。 (1)光合成細菌の系統性では、緑色糸状細菌Chloroflexus aurantiacusが系統樹の上ではもっとも早い分岐をすることが知られていたが、光合成色素の合成経路から考えと、嫌気性細菌のHeliobacteriaが早い可能性が高いこと、(2)原核藻類の色素系は単純な組織ではなく、多くの色素を合成する能力を初期に獲得し、進化とともに単純化していく方向にあること、(3)渦鞭毛藻においては1ゲノム-1環状DNA構成であり、生物界全体でも極めて特異な構成であること、などが明らかになってきた。 こうした議論を踏まえて、次の研究の進展の方向を探った。
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