研究概要 |
SRが脱分極依存性Ca放出チャネルを獲得し、Ca貯蔵部位だけでなくCa放出オルガネラとして働ける様になったプロセスとそれを担うタンパクや遺伝子の同定、DHP受容体の進化と関連した情報伝達機構を生理学的手法を用いることにより解明することを目的とし実験を行った。海生プランクトンである原索動物Doliolum,Oikopleura,Salps(ウミタル、オイコプレウラ、サルパ)を用いる実験をフランスで、頭索類Branchiostoma(ナメクジウオ)の実験を英国で行なうことにより、きわめて短期間でDHP受容体が進化上で果たした役割が解明されるものであり、これらの動物進化系統実験によりオルガネラ(SR、T管、DHP受容体)が収縮弛緩にたいして果たしてきた役割が構造機能の両面から解明されるものである。今回はNa/Ca交換輸送系、E-C連関収縮機構の系統的な発生時期の解明をめざし、SR、T管をともにもつ海生プランクトンである原索動物Oikopleura(オイコプレウラ)、矢虫類Sagitta(ヤムシ)、T管のみ持つDiphys(フタツクラゲ)、T管もSRも欠いているSiphonophore(クラゲ)などの海生プランクトンを用いて実験を行った。SR、ERを欠いたプランクトンであるウミタル(Doliolum)はこのときCaはNa/Ca交換輸送によってのみ細胞外へ排出されることが判明した。細胞内CaストアとしてSRが機能している動物種SRのみもつ、頭索類Branchiostoma(ナメクジウオ)、軟体動物Patinopecten(ホタテガイ)、においてはNa/Ca交換輸送は、むしろ副次的なものであり、SRが積極的に細胞内Ca濃度を調節することが明らかとなった。
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