研究課題/領域番号 |
09044249
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
佐竹 正延 東北大学, 加齢医学研究所, 教授 (50178688)
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研究分担者 |
千葉 奈津子 東北大学, 加齢医学研究所, 非常勤研究員
仁木 賢 東北大学, 加齢医学研究所, 助手 (60241626)
渡邊 利雄 東北大学, 加齢医学研究所, 助教授 (60201208)
JAYNES Jim トマス, ジェファソン大学・キンメル癌研究所, 助教授
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キーワード | 転写因子 / 急性骨髄性白血病 / AML1 / PEBP2β / CBFβ / キメラ遺伝子 / Tリンパ球 / 細胞骨格 / アポトーシス |
研究概要 |
(1)TCRに依存したT細胞ハイブリドーマのアポトーシスは、AML1蛋白の過剰発現により抑制される。 T細胞ハイブリドーマDO11.10を抗CD抗体で処理すると、TCRシグナルによりFas及びFasリガンド遺伝子の発現が誘導され、細胞はアポトーシスに到る。抗体処理により内在性AML1転写産物の量は著名に上昇する。しかしながら何らかの理由により内在性のAML1蛋白量、PEBP2のDNA結合活性の上昇にはつながらなかった。そこで外からAML1-cDNAを導入し過剰発現株を複数個単離した。これらの株ではPEBP2のDNA結合活性が亢進するとともに、抗CD3抗体処理によるアボトーシス誘導に抵抗性を示した。そしてTCR刺激をしてもFasリガンド転写産物の誘導が抑制されており、かわって増殖性シグナルの反映であるIL-2Rαの発現が認められた。AML1過剰発現株をCD3抗体とFas抗体の両者で処理するとアポトーシスが認められるので、細胞内のFas/Fas-リガンド以降の死のカスケードは保持されている。以上によりAMLI蛋白は、Tリンパ球におけるTCRシグナルを、アポトーシスまたは細胞増殖のどちらに振り分けるかのスイッチングにおいて、枢要な役割を果たしているものと考えられた。 (2)PEBP2β蛋白は組織培養細胞において主に細胞質に局在し、かつ細胞骨格にアフィニティーを示す。 細胞分画法・免疫染色法により、培養細胞内のPEBP2β蛋白は、内在性のものであれ外から導入したものであれ、主に細胞質に局在することが判明した。このPEBP2β蛋白は、DNA結合性のαサブユニットからは遊離の形で存在している。また細胞質PEBP2β蛋白のかなりの部分は細胞骨格標品に保持され、さらに一部はストレス・ファイバーや膜突起のヴィンクリン分子と共局在を示した。 PEBP2β-SMMHCキメラ蛋白はストレス・ファイバー構築を崩壊させ、細胞形態の変化を引き起こす。 キメラcDNAを培養細胞に導入・発現させることにより、細胞形態が劇的に変化した。即ち細胞は伸長し、長い細胞質突起を有した。この形態変化にはストレス・ファイバー構築の崩壊が伴っていた。そして形態変化を引き起こす為には、キメラ蛋白のPEBP2β部分とSMMHC部分の両方の存在が必要であった。キメラ蛋白の局在については、かなりの部分が細胞骨格標品及び細胞膜分画に回収された。一方キメラ蛋白は核にも局在し、かつPEBP2依存性の転写活性化を脱制御することも確認された。但し転写の脱制御それ自体は、細胞形態の変化には結びつかない。以上によりキメラ蛋白は、その細胞内局在即ち細胞質或いは核局在に対応して各々、ストレス・ファイバー或いは転写に対してその作用を発揮するものと考えられる。
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