研究課題
国際学術研究
ショウジョウバエの発生・分化において重要な役割を果たす遺伝子については、そのホモログが哺乳類にも存在し、重要な生理的機能を担っているとの知見が多数蓄積されてきている。ショウジョウバエのrunt遺伝子は、体節の決定・神経の初期発生・性分化の局面で機能することが知られている。一方我々の研究対象である噛乳類(ヒト、マウス)のPEBP2転写因子は、runtホモログに相当する。PEBP2転写因子は、2種類のサブユニットα・βからなるヘテロ2量体である。αサブユニットがDNA結合能を担い、一方βサブユニットはそれ自身にはDNA結合能はないが、ダイマー形成によりαサブユニットのDNA結合能を促進する。αサブユニットをコードするAML1遺伝子が直接のruntホモログに相当し、βサブユニットをコードするPEBP2β遺伝子はruntパートナー遺伝子にあたる。両遺伝子が医学的見地から重要であることは、以下の点から確立している。即ち両者ともヒト急性骨髄性白血病(AML)の染色体転座・逆位の切断点に位置し、染色体再編成によりキメラ遺伝子を生成する。このキメラ遺伝子が白血病発症の原因遺伝子である。本研究は哺乳類のrunt相同遺伝子、及びそのパートナー遺伝子が細胞分化・癌化・発生において果たしている機能を、分子生物学的に解明し、総合的に理解することを目的として行われた。成果は以下の三点に要約される。1. AML1,PEBP2β遺伝子はデフィニティブな造血能の発生に必須であり、AGM領域での造血発生においては転写因子の量に依存して作用している。2. ヒトAMLのキメラ遺伝子産物の一つが、細胞骨格系に作用することを見出した。3. Tリンパ球においてT細胞受容体からのシグナルが、増殖または死へと振り分けられるのを、AML1転写因子の量が決定する。
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