研究分担者 |
今井 克之 秋田大学, 医学部, 助手 (80006741)
佐藤 充 秋田大学, 医学部, 助手 (60226008)
BERG Trond オスロ大学, 理学部, 教授
BLOMHOFF Run オスロ大学, 医学部, 教授
NORUM Kaare オスロ大学, 医学部, 教授
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研究概要 |
北極圏動物は大量のビタミンAを体内に貯蔵しているにもかかわらず、ビタミンA過剰症には罹患していない。ヒトやラットではビタミンAは主として肝臓星細胞(hepatic stellate cells;ビタミンA貯蔵細胞)に貯蔵されている。そこで、これらの動物におけるビタミンA貯蔵の分子・細胞メカニズムを明らかにする目的で、北極圏スバルバ-ル群島に赴き、北極キツネ、ヒゲアザラシ、ワモンアザラシ、スバルバ-ルトナカイ、シロカモメ、ニシツノメドリ、ウミガラスを捕獲して、肝臓、腎臓、膵臓、小腸(空腸)、肺を高速液体クロマトグラフィーおよび、種々の形態学的手法(塩化金法、蛍光顕微鏡によるビタミンA自家蛍光観察、透過型電顕、脂肪染色、H.E.染色)により解析した。 北極キツネの肝臓(n=5)には18,438±2.314nmol/g wet weightのレチニルエステルが存在していた。ビタミンAは肝臓星細胞の細胞質にある大小多数の脂質滴に貯蔵されていた。他の動物の肝臓におけるレチニルエステルの量はヒゲアザラシ9,956±5,857(以下いずれもnmol/g wet weight.n=9)、シロカモメ4,710±3,164(n=22)、ウミガラス1,589±225(n=4)、ワモンアザラシ1,551±2,486(n=6)、ニシツノメドリ1,183±589(n=6)、スバルバ-ルトナカイ921±264(n=7)であった。いずれも肝臓星細胞の脂質滴に貯蔵されていた。これだけ大量のビタミンAを肝臓星細胞が貯蔵していても、他の器官のビタミンA貯蔵量はわずかであった。 以上の結果は北極圏の哺乳類と鳥類はヒトやラットと同じく肝臓星細胞にレチニルエステルを脂質滴の形で貯蔵することを示している。
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