【目的】多彩な老化現象を示すklothoマウスにおける血管機能異常の機構を明らかにする。特に、ノルアドレナリンに対する収縮反応性の異常と血管内皮由来一酸化窒素(NO)産生低下の有無を明らかにする。Parabiosisモデルを用いて、klotho遺伝子のコードする蛋白が液性因子として血管保護作用を持つか否か明らかにする。【方法】klothoマウスの胸部大動脈リング状標本を作製し、Krebs溶液中に懸垂した。ノルアドレナリン(10-10 10-7 M)に対する収縮反応とアセチルコリン(10-8 - 10-5 M)による血管弛緩反応を、野生型とヘテロ接合体および両者のParabiosisモデルで検討した。【結果】ノルアドレナリン(10-7 M)による収縮張力はヘテロ接合体(1.2±0.2mg)で、野生型(0.8±0.1mg)より亢進していた(n=6)。アセチルコリン(10-5 M)による大動脈弛緩率は、野生型(80±4%)に比して、ヘテロ接合体(35±5%)で減弱していた(n=6)。Parabiosisモデルでは、ヘテロ接合体のアセチルコリンに対する反応が改善していた(57±6%)。【総括】Klothoマウスでは、交感神経系に対する反応が亢進していることに加えて、血管内皮機能低下があることも明らかとなった。Parabiosisによりヘテロ接合体のアセチルコリンに対する弛緩反応が改善することから、Klotho蛋白は血管保護作用を持つ液性因子であると考えられる。
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