研究分担者 |
黒川 峰夫 日本学術振興会(東京大学, 医学部附属病院), 特別研究員
佐々木 光 東京大学, 医学部附属病院, 助手 (60282638)
本田 浩章 東京大学, 医学部附属病院, 助手 (40245064)
千葉 滋 東京大学, 医学部附属病院, 助手 (60212049)
三谷 絹子 東京大学, 医学部附属病院, 助手 (50251244)
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研究概要 |
インテグリン刺激に際しては,FAKが自己リン酸化し,そこから,シグナルカスケードが開始され,Casがチロシンリン酸化される.3Y1細胞やNIH3T3細胞などを通常の接着状態で培養しているときには,Casはその大部分が細胞質に存在するが,接着刺激を加えた時や,v-Crkや活性型Srcで形質転換された細胞では,Casの細胞骨格分画への局在が増加した.蛍光免疫染色でみた場合も,v-CrkやSrcで形質転換した細胞では,接着斑(またはpodosome)の染色が増大していた.Casの接着斑への局在のためには,CasのSH3領域が必須であり,これには,FAKあるいはCAKβが関与していると予想される.一方で,接着刺激や形質転換にともなうCasの接着斑局在の増大に対しては,Srcキナーゼが重要な役割を果たしていることが示されている. 我々は,Casの個体形成における役割を解析する目的でCasのノックアウトマウスを作成した。Casのノックアウトマウスは胎性期11.5から12.5日で著明なうっ血と成長障害を来して死亡した。病理学的解析では心臓の低形成及び全身の血管の拡張が認められたが、これ同時期の正常個体におけるCasの組織分布にほぼ一致した。電子顕微鏡による解析ではCasのノックアウトマウスの心筋細胞において筋線維およびZバンドの形成不全が認められた。またCasのノックアウトマウスの胎児から樹立した線維芽細胞においてアクチン線維の構造異常が認められ、この異常はCasの再導入により正常化した。以上の結果は、Casの生物学的作用はアクチン線維の束状形成であり、Casを欠いたマウスは心筋および血管平滑筋の収縮機能不全によりうっ血および全身の循環不全を来して死亡すると考えられた。
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