研究課題
国際学術研究
本研究は申請者がカリフォルニア大学在任18年間の実績をもとに、長年の間緊密な共同研究体制係を維持して来たカリフォルニア大学認知神経学の教授陣とハーバード大学磁気共鳴センターの教授陣との間で国際学術共同研究を確立、推進することを目的として行われた。言語機能の解析とその皮質表象の局在解明は米国研究者にとっても最重要課題のひとつであり、多重言語を用いた研究には近似言語以外の言語を母国語とする国との協力が必須である。特に、同一の超高磁場磁気共鳴装置を有する本邦と米国の代表的な機関の共同研究は世界的立場から見ても重要な課題であった。初年度は超高磁場装置を用いた機能的磁気共鳴画像(fMRI)の設定と装置の標準化を行うことに主眼が置かれた。この作業はハーバード大学磁気共鳴センターの教授陣との共同研究が主体となった。続いて、超高磁場装置の特性を生かしたfMRIの課題設定の検討を行い、カリフォルニア大学認知科学の教授陣が参加することとなった。この共同研究体制は現在でも継続しており、平成11年度および12年度の国際学術研究助成が内定している。本共同研究が齎した具体的成果としては、まず、読字に関する「英語型」と「日本語型」の発見が上げられる。「黙読」における文字のsymbolic decoding過程を対象とした研究の結果、「読む」行為における脳機能分布は民族学的backgroundに依存せず、最初に学習された言語に依存することが判明した。同時に、「英語型」と「日本語型」とに優位の差があることが証明された。第二言語の読字機能は第一言語のそれの延長上にあり、英語を母国語として学習したヒトはethnical backgroundに関係なく英語も日本語も「英語型」で読み、日本語を母国語として学習したヒトは日本語も英語もともに「日本語型」で読むことが証明された。続いて行われた賦活部位の詳細解析から、漢字に代表されるsemantic symbolのdecodingを必要とする言語では左半球のsuperior temporal sulcusの後部が特異的に使われること、alphabetに代表されるsyllableによるsymbolic combinationを必要とする言語では両側のlingual gyrusが特異的に用いられることを見出した。すべての言語に共通なsymbolic decoding部位は左半球のfusiform gyrusであることも判明している。これらの知見は日米の最先端研究者の緻密な協力なしでは到底為し得なかった成果である。本研究により言語機能の詳細解明にとって国際学術共同研究が如何に重要な役割を果たすかが実証されたと言える。
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