研究概要 |
HBV X蛋白(HBx)がRNAポリメラーゼサブユニットRPB5と結合し、転写装置を修飾する可能性を検討した。本研究は、ウイルス制御蛋白が転写装置と直接相互作用し転写を正又は負に修飾する研究であり、転写装置の新しい局面を明らかにする研究と位置付けられる。この研究で得られた成果は、1)HBxが転写基本因子TFIIBとRPB5とに相互作用することを見い出した。置換変異HBxを用いた検討により、3者間の相互作用領域がHBxによるトランス活性化に必要であることを確認した(J.Biol.Chem.,‘97)。2)in vitro及びin vivo転写系で人為的プロモータを用いて、HBxは転写活性化因子として機能せず、転写補助因子として種々の異なった転写活性化系にCoactivatorとして機能した(J.Biol.Chem.,‘98)。3)RPB5が制御蛋白と相互作用するサブユニットであることから、RPB5と結合する新規蛋白の単離・同定を進めた。ヒトcDNAライブラリーからRPB5結合蛋白cDNAの単離を行い、新規のRMP(RPB5-mediatingprotein)を同定した(Mol.Cell.Biol.,‘98)。RMPは、TBPやHBxとの結合能は示さず、RPB5と特異的に結合した。HepG2細胞を用いてRMPを過剰発現すると、HBxによるトランス活性化が抑制された。更にHBxの存在しない条件で、活性化転写を抑制するCorepressor活性を示した。RMPのRPB5結合領域が内部欠損変異RMP(RMP-Id150など)を用いた解析から、RMPが転写を負に制御する機能には、RPB5結合領域が必須であった。これらの結果は、RMPがHBxと機能的な拮抗因子であることを示唆した。4)p53とHBxの結合を生化学的に示し、p53及びHBxのトランス活性化が相互に干渉すること、しかしXトランス活性化能を欠くがp53機能を干渉する欠損変異HBxの存在を明らかにした。これらの結果はHBxのトランス活性化とp53への干渉とは区別されるHBxの機能であることを明らかにした(Cancer Res.,‘97).
|