研究課題
国際学術研究
マウスB細胞は強い抗原受容体架橋でアポトーシスをおこすが、CD40シグナルやCD72の架橋の共存によりアポトーシスが阻害され増殖を開始する。B細胞株WEHI-231では、抗原受容体(BCR)架橋による細胞死の際にCDKインヒビターの発現上昇がおこる。誘導的発現系を用いてWEHI-231にCDKインヒビターの発現を誘導したところ、WEHI-231は細胞死をおこした。この結果は、CDKインヒビターがBCR架橋によるB細胞の細胞死に関与することを示唆する。通常の線維芽細胞ではCDKインヒビターの発現のみでは細胞周期停止がおこるが細胞死はおこらない。しかし、c-Mycを過剰発現する線維芽細胞では細胞周期停止を誘導する刺激により.細胞死をおこす。しかし、c-Myc発現プラスミドを導入したWEH-231ではBCR架橋による細胞死に耐性になることが報告され、B細胞ではc-MycがBCR架橋による細胞死に阻害的に働くと考えられてきた。そこで我々は、誘導的c-Myc発現系を樹立し、以前の結果がアポトーシス耐性株を選択したためのアーチファクトであることを明かにし、さらに、c-MycがBCR架橋による細胞死を増強することを示した。これらの結果より、CDKインヒビターによる細胞周期停止がB細胞の細胞死に関与し、この際にc-Mycが重要な役割を果すことが明かとなった。一方、CD40シグナルやCD72架橋により、アポトーシス阻害がおこる際にはCDKインヒビターのレベルが低下する。我々は、CD72がチロシンキナーゼLynによりリン酸化され、フォスファターゼSHP-1と会合して、BCRを会するシグナル伝達を負に制御することを明かにした。また、Lynがc-Mycの発現を抑制することを明かにした。以上の結果から、CD72がc-MycやCDKインヒビターを負に制御し、増殖誘導や細胞死の阻害がおこると示唆された。
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