研究課題
P-ヌクレオシドのデオキシ体(dP)に関し、ニッケルイオンの影響について研究を行った。まず、変異に対する影響を調べたところ、GC-to-AT変異を選択的に阻害することがわかった。逆のAT-to-GC変異はむしろ弱く促進的であり、阻害作用は認められなかった。この影響は、DNAポリメラーゼによる取りこみへの影響によるのではないかと考え、大腸菌DNAポリメラーゼllarge fragmentを用いて、dPのトリリン酸体(dPTP)の取り込みへのニッケルイオンの影響を検討した。その結果、ニッケルイオンは一般にDNA合成の速度を遅くするが、鋳型G上のdPTPの取り込みをdCTPの取り込みより強く阻害することがわかった。一方、鋳型A上の取り込みはPでもTでも変わらなかった。さらに、鋳型P上の取り込みはGとCとの間で差がなかった。以上の現象が、大腸菌内のDNA複製でも起きていれば、ニッケルの効果を説明することができる。また、dPTPの大腸菌逆転写酵素による取り込みも検討し、よい基質となることがわかった。取り込みの詳細については現在さらに検討中である。リボ体のトリリン酸体であるrPTPについては、エイズウイルスの転写の因子であるTatたんぱく質と結合するTAR RNAに対する取り込みの実験を行った。その結果、rPTPはrUTPの替りに良く取込まれ、完全にUがPで置き変わったRNAを調整することができた。その構造はUを含むものとは多少違っているが、TATとの結合能は25%残っている。また、リボヌクレオシドrPは弱い変異原性を示すことがわかった。
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