研究課題
国際学術研究
インフルエンザウイルスの宿主への感染性を決定している因子に、感染性の発現に必要な宿主細胞プロテアーゼと、感染性の抑制に作用するプロテアーゼインヒビターがある。本研究で我々はインフルエンザウイルスを活性化するプロテアーゼとして、トリプターゼクララを見出してきたが、さらにこれと同様な活性を示すミニプラスミンを発見した。プラスミンは分子量90kDaの親水性蛋白質であるが、ミニプラスミンは分子量38kDaの疎水性蛋白質で、特別のレセプターなしに細胞膜表面に強固に結合する。ミニプラスミンの生成は、プラスミンにウロキナーゼとエラスターゼの2種類の酵素が働いたときにのみ形成されることから、生体の炎症性反応と強く結びついた現象と推定される。一方これ等のプロテアーゼを抑制する生体内物質として、我々は肺サーファクタントと粘膜プロテアーゼインヒビターを見出してきた。この両者は共にトリプターゼクララの活性を抑制し、抗ウイルス作用を示すが、肺サーファクタントはトリプターゼクララの吸着剤として作用し、粘膜プロテアーゼインヒビターは、プロテアーゼの活性中心へ結合することによってその阻害作用を示すことが明らかとなった。一方ミニプラスミンに対しては、粘液プロテアーゼインヒビターは作用せず、また肺サーファクタントの効果もいまだ不明である。本研究において我々は、効果的な抗インフルエンザ作用を発揮するためには、トリプターゼクララとミニプラスミンのどちらの活性も抑制する阻害剤群が必要であることを明らかにした。
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