研究分担者 |
杉本 勝良 香川医科大学, 医学部, 客員教員
宮本 修 香川医科大学, 医学部, 助教授 (00253287)
小林 良二 香川医科大学, 医学部, 教授 (00020917)
山口 文徳 香川医科大学, 医科部, 助手 (40271085)
板野 俊文 香川医科大学, 医学部, 教授 (60145042)
|
研究概要 |
可塑的な神経回路網形成機構に関与し、タウ蛋白質やニューロフィラメントなどをリン酸化するサイクリン依存性キナーゼ5(Cdk5)は、アルツハイマー脳においてはこれらの蛋白質を過剰リン酸化にすることにより,神経回路網に損傷を生じ可塑性が損なわれ,アルツハイマー病の神経変性疾患が発症するとの仮説を立てカルガリ大学医学部との共同研究を行い以下の成果を得た。 1. カルガリ大学よりヒトのアルツハイマー脳とそれにマッチする正常脳をそれぞれ8検体及び18検体入手した。特に前脳(11例)と海馬(4例)とで比較検討した。 2. アルツハイマー脳におけるCdk5とp35の発現は特異抗体を用いたWestern blot法で解析した。その結果、アルツハイマー脳では正常脳に比して20%、15%それぞれ高い発現が観察された。 3. 活性は、アルツハイマー脳と正常脳の大脳皮質及び海馬を用いホモジネートを作製した上で、100,000gの上清5mgを抗Cdk5抗体で免疫沈降し、その活性を測定することにより比較検討した。その結果、アルツハイマー脳で正常脳より約15%高かった。アルツハイマー海馬においてコントロールに比べて、約30%高い活性が検出された。また前脳においては、大きな差は認められなかった。高度のアルツハイマー脳においては、かえって活性は低下した。 4. Cdk5とp35の発現が、DNAレベルでの変化がないかをSouthern blot解析で検討したが、明らかな差は見いだせなかった。 5. Cdk5とp35の分布を、アルツハイマー脳と正常脳とで、免疫組織染色により比較検討した。アルツハイマー脳に認められる老人班(Paired helical tangle)周辺で免疫染色性が高い傾向が認められた。 6. Cdk5/p35の活性を制御している因子として、アクティベーターやインヒビターの可能性のある蛋白質を検討した。カルシウム結合蛋白質を解析したところ、S100A及びBでは、促進も抑制も示さなかった。我々がクローニングしたカルシウム結合蛋白質calbrainを用いた解析では、活性化を示した。すなわちCdk5の5〜10倍量において約2〜3倍の活性化を示したが、10倍以上の過剰量になるとかえって抑制を示した。 7. Cdk5活性がリン酸化により制御されている可能性につきリコンビナントのCdk5とp25を用いて検討したが、A-kinase,C-kinase,Ca/CaM-kinase2,casein kinaseによってはリン酸化を受けず活性も変化しなかった。
|