研究概要 |
1.ヒトUDP-N-アセチルガラクトサミン:ポリペプタイドN-アセチルガラクトサミン転移酵素アイソザイム(T1,T2)のcDNA配列を基に、コンピューター解析により親水性および抗原性に富むペプタイドを合成した。この合成ペプタイドに対するウサギ抗血清を用い、大腸癌および正常大腸組織におけるT1およびT2蛋白発現を免疫組織化学染色により検討した。その結果、大腸癌組織においてT1の蛋白発現が13例中1例(8%)にのみ認められたのに対し、T2の蛋白発現は13例中9例(69%)に認めれた。大腸癌症例6例の癌組織の同一切片に存在した正常組織および健常人20例の正常大腸組織においてT1およびT2の蛋白発現はみられなかった。 以上の結果より、大腸上皮細胞の癌化に伴いT2蛋白発現はup-rcgulatc されていることが示さた。また、癌化に伴うT2蛋白発現にはheterogencityがあることが明らかとなった。 2.ヒト培養癌細胞株(膵癌9種、胃癌2種、乳癌1種、大腸癌5種)におけるヒトUDP-N-アセチルガラクトサミン:ポリペプタイドN-アセチルガラクトサミン転移酵素アイソザイム(T1,T2,T3)のmRNAの発現をNorthcrn blot 法により検討した。その結果、検討したすべての培養癌細胞株において、T1およびT2のmRNAは低レベルながらも比較的一様な発現が認められた。一方、T3のmRNA発現は分化度によって異なり、高分化癌では高発現レベル、中分化癌では低発現レベルを示した。未分化癌におけるT3のmcssage発現は検出されなかった。癌細胞の分化度によるT3の発現の差は遺伝子組み替えT3蛋白に対する抗体を用いたWestcrn blot でも確認された。以上の結果より、癌細胞では分化に伴いヒトUDP-N-アセチルガラクトサミン:ポリペプタイドN-アセチルガラクトサミン転移酵素が発現され、癌細胞における糖鎖構造の変異は同糖転移酵素により調節されていることが示唆された。
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