川崎病の疫学、病態および治療法の日本、北米における比較研究

1997 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 09044347
• 研究機関: 久留米大学
• 研究代表者: 加藤 裕久 久留米大学, 医学部, 教授 (30080724)
• 研究分担者: TAKAHASHI Ma 南カリフォルニア大学, 医学部, 教授 ; MELISH Maria ハワイ大学, 医学部, 教授 ; NEWBURGER Ja ハーバード大学, 医学部, 準教授 ; SHULMAN Stan ノースウエスタン大学, 医学部, 教授 ; 川崎 富作 日本川崎病研究センター, 所長 ; 柳川 洋 自治医科大学, 医学部, 教授 (30077169)
• キーワード: 川崎病 / 疫学 / ウイルス / ガンマグロブリン / カテーテル治療 / 心臓移植

研究概要

1.川崎病の日本、北米における疫学:柳川により日本全国の厚生省研究班による疫学調査の結果が報告された.それによればわが国で今まで約13万例の報告があり、年間およそ6000例発生していること、発生頻度は4才以下の小児10万につき90で、以前に比べ発生頻度はやや上昇していること、以前みられた3-4年おきの多発はこの9年間ではみられていないこと、が報告された.
一方、アメリカでは日本のような全国規模の疫学調査がされていないが、米国CDCがpassive surveiranceを行っており、それによればアメリカ全体で年間約2000-2500例の発生があるとみられていることが報告された.
2.川崎病の成因、病態に関する研究:ロスアンゼルスのTakahashiより患者急性期の血清およびリンパ球よりnested PCR法によりパラミクソウイルスなどを検出したと報告した.ただ検出したものは単一ウイルスでなく病因として今後の検討が待たれる.
3.急性期治療に関して:ガンマグロブリン療法により冠状動脈瘤の頻度が減少したが、ガンマグロブリン不応例もあり、これらの例をどのように治療するかが現時点での問題である.ボストンのNewburgerはステロイドパルス療法の可能性を述べたが、これは今後日本側とも同じプロトコールで検討することとした.
4.心臓後遺症の治療:加藤、赤木は冠状動脈狭窄例に対してカテーテル治療を試み、有効な成績を見たと報告した.それによればバルーン拡大術は有効だが16%に新しい動脈瘤の出現をみており問題だとしており、むしろステントが良いと述べた.長期例で石灰化の強い例にはロタブレーターが最も有効であると結論した.シカゴのShulmanは重度の心筋障害を伴った例に対して心臓移植が行われた13例につきレビューした.

研究成果

• [文献書誌] Nakamura Y: "Cardiac sequelae of Kawasaki disease among recurrent cases" Arch Dis Child. 78. 163-165 (1998)
• [文献書誌] Sugimura T: "Interventional treatment for chidren with severe coronary artery stenosis after long-term Kawasaki disease" Circulation. 96(11). 3928-3933 (1997)
• [文献書誌] Kato H: "Ischemic heart disease in Kawasaki disease" Prog Pediatr Cardiol. 6. 219-226 (1997)
• [文献書誌] Yanagawa H: "Use of gammaglobulin for Kawasaki disease" Pediatr Cardiol. 18. 9-23 (1997)
• [文献書誌] Yanagawa H: "Update of the epidemiology of Kawasaki disease in Japan" J Epidemiol. 6. 148-157 (1996)
• [文献書誌] Terai M: "Prevalence of coronary artery abnormalities in Kawasaki disease" J Pediatr. 131. 888-893 (1997)
• [文献書誌] Cabana VG: "Serum amyloid A and high density lipoprotein participate in the acute phase response of Kawasaki disease" Pediatr Research. 42. 651-655 (1997)
• [文献書誌] Checchia PA: "Cardiac transplantation for Kawasaki desease" Pediatrics. 100. 695-699 (1997)
• [文献書誌] Rowley AH: "IgA plasma cells in vascular tissue of patients with Kawasaki syndrome" J Immunology. 159. 5946-5955 (1997)
• [文献書誌] Newburger J: "Treatment of Kawasaki disease" Lancet. 374. 1128 (1996)
• [文献書誌] Wright DA: "Treatment of immune globulin resistant Kawasaki disease" J Pediatr. 129. 483-484 (1996)
• [文献書誌] Kato H: "Long-term consequences of Kawasaki disease,A 10-21 year follow-up study of 594 patients" Circulation. 94. 1379-1385 (1996)
• [文献書誌] Kato H: "Pediatric Cardiology Updates ed.by Jue HC" Springer,Tokyo, 162(91-98) (1997)
• [文献書誌] Kato H: "Clinical Paediatrics:International practice and research" Saunders,London, 220(43-60) (1996)