研究課題
HB-EGFは細胞より分泌されるEGFファミリーの増殖因子である。しかし、その膜結合型前駆体は前駆体であるだけでなく、それ自身が膜結合型増殖因子として働く。また、この膜結合型HB-EGFはジフテリア毒素リセプターとしての役割も持つ。本研究は、目加田のグループのジフテリア毒素リセプターの側からの研究成果とHB-EGFの発見者であるクラグスバーン博士の増殖因子の側からの知見を総合して、HB-EGFによる細胞接着を介した細胞増殖調節機構(ジャクスタクライン機構)の解明を目的とする。平成9年4月から現在(平成10年1月)までに以下の検討を行い、次のような結果を得た。(1)マウスHB-EGFとヒトHB-EGFのアミノ酸1次構造の違いを基に、多数のHB-EGFミュータントを作成しHB-EGFとジフテリア毒素の結合に重要なアミノ酸を決定し、分子の結合部位を推定した。(2)CD9はHB-EGFに結合して、その作用を増強するが、結合増強に関係するHB-EGF並びにCD9の分子内領域を決定した。(3)膜結合型HB-EGFを分泌型に変える膜結合型プロテアーゼを同定し、このプロテアーゼはTPAによって活性化されること、を明らかにした。(4)CD9はHB-EGFの増殖因子活性やジフテリア毒素結合能のレギュレーターと考えられる。そこで、現在CD9について、ノックアウトマウスとトランスジェニックマウスを作成中で、これらの結果をもとに、今後更にHB-EGFのジャクスタクライン機構の解明を行う予定である。
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