1.本年度は本調査研究の最終年度として、これまでの現地調査で明らかにした知見に基づき、本研究全体を取り纏めることを課題としている。また本研究課題にとって極めて重要な位置を占める「国家教育法-National Education Act」が1999年7月1日に成立(8月19日施行)したことから、その規定内容の実施に向けての取組みと検討課題を明らかにするために、6〜7月と11月の2度の現地調査を行った。 2.同法は9年間の義務教育と12年間の無償教育の実現や教育行政の地方分権化を含む大胆な教育改革を志向するものであり、10の緊急立法を含む32の下位立法を予定している。 3.そして同法は、その第53条において、教員のみならず学校管理職者及び教育行政官の免許制度を別途の法律によって導入することを定めている。法施行後、国家教育委員会、教育省内部に各種のタスク・フォースが設置され、2002年の全面的な教育改革実施に向けた検討が始められた。具体的な免許制度は明らかにされていないが、主要な論議として5年の期限免許と各種の教員の報償制度により、教職の質的向上を促すことが企図されている。 4.だが経済危機からの脱却が十分に見通せず、教育の質的向上を図る教育改革、教師教育改革の財政的裏付けは明確ではない。また法の制定がその執行一実質的効力を意味するわけではなく、地方分権化の推進と併せて教育行政制度の改革が同時に必要とされている。 5.また教師教育を担う各機関の相互連携が極めて不十分であり、中央省庁(教育省と大学省の統合が予定され、教員養成政策の一元化は期待できる)、地方行政機関、養成機関の協力体制が必要とされている。
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